「肥満辱め」で肥満者の健康が悪化

心臓発作やうつ病リスクが増大

肥満者が太っているのを恥かしめればダイエットを促すことができるという考えはまったく誤った偏見であり、むしろ心臓発作やうつ病などのリスクを高めてしまうという論文が米医学誌「オベシティ」(2017年2月号)に掲載され、話題を集めています。

この論文を発表した米ペンシルベニア大学の研究チームは、製薬会社の減量治療薬の臨床試験に参加していた肥満の成人(多くが黒人女性)のうち159人を対象に、肥満による「偏見の内面化」(偏見の心への影響)とうつ病との関連を明らかにするための質問調査を行いました。

その結果、太っているために怠け者で無能で魅力がなく意志も弱いなどといった否定的な偏見を受けている被験者には「偏見の内面化」が見られたといいます。

また、心臓病や2型糖尿病などにかかわるメタボリック症候群のリスク因子である中性脂肪、血圧、胴囲などの検査を被験者たちに行ったところ、偏見の内面化によって自己否定感が強い人はそうでない人にくらべてメタボリック症候群のリスクが3倍も高く、中性脂肪値も6倍高いなど、心臓病や糖尿病などのリスクが大きく上昇することが明らかになりました。くわえて、こうしたリスク上昇と体格指数(BMI)やうつ病との間にも非常に高い関連性がみられたといいます。

「肥満辱め」が心理的ストレス反応を促進

研究チームによると、肥満者の体形を辱めたり、批判したりする「肥満辱め」はよくありがちな偏見で、ネットいじめや有名人の外観への攻撃などといった形でアメリカの至る所で目にするといいます。そして、そうした辱めは肥満者がダイエットや健康改善を始めるための動機付けになるという誤った認識が広がっているというのです。

しかし、研究チームによるとこうした認識はむしろ逆効果で、肥満への偏見は肥満者の心身に悪影響を与え、体内の炎症やコルチゾール増加などの心理的ストレス反応を増大させてしまいます。そして、運動を避けたり、ストレス解消に沢山のカロリーを消費するなどといった不健康な行動に走らせることで、心疾患や代謝障害のリスクが高まってしまうのです。

こうした事実を裏付けるように今回の調査でも、肥満への偏見の内面化による自意識の悪化と、生活習慣病の危険因子であるメタボリック・シンドロームとの間の関わりが明らかになったのです。