「うつ」の重症度を示す血中代謝物を発見

待望だったうつ病重症度の客観的評価法

わが国の「うつ病」などの気分障害患者数は厚労省の平成26年の調査で前回調査(平成23年)の16%増の111万6000人と急増。調査開始以来最高を記録しました。

うつ病は、抑うつ、罪悪感、自殺念慮(死にたい気持ち)などの症状をともなう精神疾患です。しかし、その重症度評価はこれまで精神科医等が診察で患者の訴えや態度を基に主観的に判断していたため、客観的な評価手法が待ち望まれていました。

そんな中、九州大学や大阪大学などの共同研究グループは、うつ病患者や抑うつ症状を持つ人90人を対象に、専門家の面接による重症度評価「ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)」と、アンケートによる重症度評価尺度(PHQ-9)の2つの評価を実施しました。

さらに、患者の採血も行って、微量の血液成分から多くの代謝物を同時に測定できる「メタボローム解析」によって百種類以上の血中代謝物を計測しました。

採血による「うつ病客観的評価法」開発に期待

その結果、共同研究グループは抑うつの重症度にかかわる血中代謝物を20種類特定することに成功。とくに3-ヒドロキシ酪酸、ベタイン、クエン酸、クレアチニン、γ-アミノ酪酸(GABA)の5種類の血中代謝物については、どれも重症度に強い関連があることが明らかになるとともに、抑うつ、罪悪感、自殺念慮などの症状にかかわる血中代謝物が症状ごとに異なることも判明しました。

また共同研究グループは、機械学習によって患者の血液の代謝物の解析からうつ病の重症度を予測するアルゴリズムの開発にも成功。これらの研究成果は2016年12月16日付けの米科学誌「プロスワン」(電子版)に掲載されました。

今回の成果により、うつ病の病態メカニズムの解明や早期発見、採血による客観的評価法の開発のみならず、今回特定された血中代謝物に基づいた治療薬や補助食品の開発などへの期待が高まっています。