「統合失調症」患者の脳内で特定物質が低下

たしかな原因が不明の精神疾患「統合失調症」

統合失調症(旧精神分裂病)は100人に1人弱がかかると言われる発症率の高い精神疾患です。症状としては幻覚や妄想、自閉、集中力低下などが代表的で、ひどくなると社会生活が困難になるケースもあります。

統合失調症の原因の確かなところはいまだに不明ですが、脳の構造や脳内神経伝達物質の異常が考えられており、その一因として脳内の「ミエリン(髄鞘)」という物質の形成不全が疑われています。

リン脂質を主成分とするミエリンは、脳内の神経細胞の情報伝達にかかわる突起(軸索)を覆い、情報伝達を促進する働きを担っています。その量が減ると、脳内で正確な情報伝達ができなくなることで統合失調症を引き起こすとみられていますが、実証されてはいませんでした。

そんな中、統合失調症の患者の脳の軸索を覆うミエリンの量をMRI(磁気共鳴画像装置)画像を用いて数値化することで、ミエリン量が形成不全によって低下していることを世界で初めて証明したと、和歌山県立医大の研究チームが昨年10月に発表。研究成果が米科学誌「プロスワン」(電子版)に掲載されました。

統合失調症の早期発見・治療に光明が

和歌山県立医大の研究チームは、統合失調症患者とそうでない被験者計約60人の一人一人の脳をMRIで複数枚撮影。画像を重ね合わせて解析したところ、統合失調症の発症者の脳はミエリン量が約10%少ないことを確認しました。さらに、ミエリンの形成不全は大脳の白質にくわえて灰白質でも起こっていることも分かったといいます。

研究グループでは、神経の情報伝達を担うミエリンの形成不全が脳内の神経の情報伝達を阻害することで統合失調症の原因となっていることが今回の研究で示唆され、ミエリン量を調べることで統合失調症の早期発見、早期治療に役立つ可能性があるとみています。そして、今後はうつ病や双極性障害などの他の精神疾患への応用も視野に入れて、研究を進めるとしています。