なぜうつ病患者は急増したか?

うつ病患者が15年間で倍以上に増加

厚生労働省の「患者調査」によると、平成8年に43.3万人だったうつ病等の気分障害の患者数は、平成23年には95.8万人と15年間で倍以上に増加しました。

こうしたうつ病患者急増の背景には、不況などによるストレスの影響が指摘されていますが、一方で新しい診断基準による安易な診断を指摘する専門家もいます。

これまでのうつ病の診断基準に代わって、近年普及しているのがマニュアル化された診断基準「DSM」です。米国精神医学会が作成した診断マニュアルDSMは症状や経過を判断基準にしたマニュアルによる効率的な診断基準ですが、この診断基準に頼るとちょっとした気分の落ち込みまでがうつに分類されてしまい、うつでない人までうつと診断されるケースが問題になっているのです。

製薬会社が大キャンペーンを展開

さらに、製薬会社によるうつ病啓発キャンペーンがうつ病患者を増加させていると主張する専門家もいます。

1999年に登場した「SSRI」(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は副作用が少ないことから、現在医療現場で広範囲に使用されている抗うつ薬ですが、この薬の登場とうつ病患者急増との間に相関関係があることが指摘されているのです。

うつ病は軽いものなら薬物療法に頼らないでも自然に回復するケースも多く、海外では軽いうつ病に対しては薬を用いないでカウンセリングなどによって回復をはかる医者も多くいます。

しかし、日本でのSSRIの発売に際して大手製薬企業はテレビCMなどをはじめとするうつ病啓発大キャンペーンを繰り広げました。これによって一般人のうつ病への関心が高まり、メンタルクリニックへの来院者が急増。うつ病と診断される人も増加して、抗うつ薬の使用も急増したことで、SSRIは製薬会社のドル箱となったのです。

欧米ではSSRI発売をきっかけに抗うつ剤の市場規模が急拡大していますが、こうした傾向はわが国も同じでした。SSRIが登場した1999年以降、わが国のうつ病患者数やメンタル休職率は急伸。それに合わせて抗うつ剤の市場規模もそれ以前の170億円台から2007年には900億円以上に急拡大しているのです。