原因不明の「統合失調症」の治療に光明が

統合失調症発症の鍵を握る物質を発見

「統合失調症」は脳をはじめとする神経系になんらかの障害が発生する精神疾患で、幻覚や妄想などの症状を特徴とします。しかし、発症率が100人に1人近くと高いのにもかかわらず、そのメカニズムはいまだに明らかになっていないため 根本的な治療法が確立されておらず、治療は抗精神病薬などによる対症療法に止まっているのが現状です。

そんな統合失調症の発症の鍵を握るとみられる体内物質を、奈良県立医科大学、滋賀県立成人病センター、米国ジョンズ・ホプキンズ大学などの研究グループが発見。昨年「米科学アカデミー紀要」にその成果が発表されました。

今回研究グループは、患者の3割近くが統合失調症を発症するとされる染色体異常「22q11.2欠失症候群」に着目。同症候群と同じ症状を示すマウスを製作してその中枢神経系を調べた結果、 脳の海馬や大脳皮質の神経細胞の分布や発達に異常があることを確認しました。

治療法開発に期待

「サイトカイン」は細胞が作り出す微量な生理活性タンパク質の総称で、細胞同士のコミュニケーションを司り、標的とする細胞の受容体に結合して細胞に作用し、細胞の増殖・分化・機能発現などにかかわります。

このサイトカインの一種である「ケモカイン」は神経細胞の発達に不可欠ですが、今回研究グループが統合失調症患者18人の鼻の粘膜から採取した細胞を調べた結果、このケモカインが一般の人と比べて減少していることも明らかになりました。

これにより、統合失調症の異常の原因がケモカインやケモカイン受容体の働きの低下にあることが示唆され、幻覚や妄想などの統合失調症の症状もこのために神経細胞に異常が生じたためと説明できます。

今回の研究成果は、これまで完全には明らかでなかった統合失調症発症のメカニズムの解明や、これまで不可能だった統合失調症の根本的療法の開発につながるとおおいに期待されています。