メンタルヘルスの法知識

Q&A

Q:残業を命じていないのに責任を追求されるのか。

A:使用者もしくは上司が残業を命じていないのに、部下が勝手に働いて、勝手にこころの病になったという論理は、事業者の健康配慮義務に反するものでしょう。

法令・判例によって、企業にとっては厳しい「健康配慮義務」が次々と課せられています。
企業が、労災認定や損害賠償請求訴訟を事前に防ぎ、労働者の健康を守るためには、健康診断の結果など、明らかにされたデータだけでなく、普段の業務を遂行する間に、従業員の健康に関する情報を得て、対応しなければなりません。

労災認定の基準は、労災発生以前から恒常的な長時間労働(たとえば、所定労働時間が9時から17時までの労働者が、深夜時間帯に及ぶ長時間の残業をたびたび行っているような場合)は、それだけで心理的負荷の強度を修正するとしています。
労災認定の判断では、恒常的過重労働を重視するようになっています。また、労働時間の長さだけでなく、仕事の密度の変化が過大なものについても考慮します。

したがって、残業を命じていなくても、管理者には部下の仕事量を認識し、健康に配慮する義務があるのです。

過労死の認定基準では、

  1. 発症前1ヶ月間から6ヶ月間にわたって、1ヶ月当たり45時間を超えて時間外労働時間が長くなればなるほど、業務と発症との関連性は強まる
  2. 発症前1ヶ月間に100時間、発症前2ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって、1ヶ月当たり80時間を超える時間外労働が認められる場合、業務と発症との関連性が強いと判断される

となっています。

この基準を超えて仕事をしている部下がいれば、制止するべきでしょう。
川崎製鉄事件(岡山地裁倉敷支判平成10年2月23日)や、電通事件(高裁判決平成9年9月26日)では、

  1. 労働者が仕事を一部引き受けようかとの申し出を断るなど、適切な業務の遂行、時間配分を誤った面がある
  2. 労働者が実際の残業時間よりもかなり少なく申告していた
  3. 労働者の業務が一定の範囲で労働時間の配分をゆだねられている性質のものであった

などで、過失相殺が認められているので、仕事の時間が本人の裁量に任せられているような仕事については、それだけ本人による健康管理義務の比重が大きくなります。