メンタルヘルスの法知識

精神障害の労災認定の流れ

労災保険では、業務が原因の傷病による後遺障害の程度(等級)に応じた給付が行われます。障害の程度は、障害等級として認定されますが、これを認定する基準として、障害等級認定基準が設けられています。

平成15年6月に、「精神・神経の障害認定に関する専門検討会報告書」を踏まえ、この障害等級認定基準が全面的に改正されました。

今まで、脳の損傷などが原因ではない精神障害、いわゆる非器質性精神障害の後遺障害の全てを画一的に障害等級第14級と認定していました。しかしながら、うつ病やPTSD等の精神障害の労災認定が増加傾向にあることや、非器質性精神障害の後遺症が多様化していることなどから、非器質性精神障害の認定基準について、業務上の器質性精神障害の後遺障害一般に関して適用するよう基準を認定するとともに、障害認定の時期が示されました。

非器質性精神障害は、その特質上、業務による心理的負荷を取り除き適切な治癒を行えば、多くの場合、治癒完治するのが一般的であり、完治しない場合でも症状がかなり軽快するのが一般的です。

つまり、非器質性精神障害の特質上、症状の改善が見込まれることから、通勤・勤務時間の遵守、対人関係、協調性等の能力のうち、複数の能力が失われている等の重い症状を有している者については、症状に大きな改善が認められない状態に達した場合においても、原則として療養を継続することとしました。

また、非器質性精神障害で、下記の精神症状が認められるものについては、原則として9級・12級・14級の3段階で障害認定をすることとしました。

  1. 抑うつ状態
  2. 不安の状態
  3. 意欲低下の状態
  4. 慢性化した幻覚・妄想性の状態
  5. 記憶又は知的能力の障害
  6. その他の障害(衝動性の障害、不定愁訴など)

その障害認定の判断基準は

  1. 身辺日常生活
  2. 生活・仕事に積極性・関心を持つこと
  3. 通勤・勤務時間の遵守
  4. 普通に作業を持続すること
  5. 他人との意思伝達
  6. 対人関係・協調性
  7. 身辺の安全保持、危機の回避
  8. 困難・失敗への対応

の8つの項目について評価することとしています。

●第9級

非器質性精神障害の等級認定の第9級とは、「精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」と定義されています。

認定の方法ですが、「後遺症認定とは」の項で示した8項目の判断基準を下記の区分で評価します。

A: 適切又は概ねできる
B: 時に助言・援助が必要
C: しばしば助言・援助が必要
D: できない

その上で、8項目の判断結果を総合的に判断し、「重度」であると判断された場合は、「第9級」の認定が下されることになります。

「重度」とは、「日常生活がある程度制限を受けるもの又は就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの」又は「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの」と定義されています。

この区分には、仕事に就けるものの、大幅に職種を変えざるを得ない、例えば、「対人業務ができない」、「運転業務ができない」ような場合が該当します。
なお、「意欲の低下等により仕事には行けないが、日常生活に支障が時にあるにとどまる」ような場合もこの区分に含まれます。

症状によっては、「重度」以上の重篤さである場合も考えられます。その場合については、非器質性精神障害は多くの場合後遺症状を残さずに治るという性質上、慎重に治癒か否かを見極め、必要に応じて療養を継続すべきであるとしています。

●第12級

非器質性精神障害の等級認定の第12級とは、「労働には通常差し支えないが、医学的に証明しうる精神の障害を残すもの」と定義されています。

8項目の判断結果を総合的に判断し、「中度」であると判断された場合は、「第12級」の認定が下されることになります。

「中度」とは「日常生活又は就労にある程度支障があるもの」又は「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの」と定義されています。

この区分には、「元の職種又は同様の職種に就けるが、かなりの配慮が必要である」ような場合が該当します。
なお、「意欲の低下等により仕事には行けないが、日常生活を概ねできるもの」もこの区分に含まれます。

●第14級

非器質性精神障害の等級認定の第14級とは、「労働には通常差し支えないが、医学的に証明しうる精神の障害を残すもの」と定義されています。

8項目の判断結果を総合的に判断し、「軽度」であると判断された場合は、「第14級」の認定が下されることになります。

「軽度」の定義は、「日常生活又は就労は概ねできるが、軽度の精神障害が認められるもの」又は「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すもの」とされています。

この区分には、「元の職種又は同様の職種に就くことができるが、多少の配慮が必要である」ような場合が該当します。