メンタルヘルスの法知識

メンタルヘルス対策は急務? 高騰する過労死/過労自殺の損害賠償額

過労死・過労自殺などの損害賠償請求訴訟は年々増加傾向にあります。労災認定基準の緩和の遅れの影響もあり、企業の健康配慮義務違反を理由として、損害賠償請求を容認する判決も多く見られます。

しかし、損害賠償請求を容認するものの、労働者側の事情を鑑み、「過失相殺」の規定を適用し、損害賠償額を減額する判決も出ています。

過失相殺とは、労働者側にも過失があるのだから、損害賠償の請求額を、過失の分だけ減額するということです。

過労自殺を労災認定した画期的な判決である電通事件の高裁判決(平成9年9月26日)も、過失相殺が適用されました。

労働者側の過失とされたものは、以下のとおりです。

(1)労働者にうつ病親和性ないし病前性格があった
(2)労働者が実際の残業時間よりも、少なく申告していた
(3)労働者の業務は、労働時間の配分が本人に任せられているものだった
(4)休暇を取るなり、精神科に行くなどの行動が期待できた
(5)労働者の両親が、改善するための措置を取っていなかった

さらに別の判決では、

  • うつ病と見られる言動が、会社では見られなかった
  • 労働者自ら病院に通うのをやめた
  • 高血圧症にも関わらず、会社からの指示があったにも関わらず、治療を受けていなかった

などが労働者の過失として、認められています。

ただし、電通事件の最高裁判決(平成12年3月24日)では、上記の(1)と(5)を否定しています。
(1)は、企業で働く労働者の性格は多種多様であり、自身の性格によって労働者に損害が発生する事態は、企業として予測すべきものである、として否定しています。
(5)は、独身で両親と同居していたとはいえ、一人の社会人として、自身の判断で業務に従事していたのだから、両親が改善の措置を取れる立場にはない、としています。

したがって、過失が認められるのは、自らの健康を管理する意志が見られなかった場合や、労働時間・形態が本人に任せられているのに、自己管理できなかった場合が多くなります。
使用者と労働者との間で合意している健康管理の問題・労働形態の問題は、双方が遵守しなければならないということです。