現時点では認知症の根本的な薬物治療は困難です。
したがって、周辺症状である幻覚・妄想・いらだち・不安・うつ状態・攻撃性(暴力)・興奮などのコントロールを主な目的として薬(下記)が使用されています。
●不安・緊張・いらだち・うつ状態 など   →【抗不安薬】
●興奮・攻撃性・幻覚・妄想・徘徊 など   →【精神安定薬】
●うつ状態・無関心・不安・いらだち など  →【抗うつ薬】
●自発性の低下・うつ状態・意欲の減退 など →【脳循環代謝改善薬】
●不眠・夜間覚醒・昼夜逆転 など      →【睡眠(導入)薬】  
これまでの認知症の薬物療法では、記憶障害などのために二次的に現れる症状を対象に、これらの薬を単独、あるいは組み合わせて使用し、症状を軽減するための治療が大部分でした。
しかし、このような薬物療法ではしっかりした使用方法のためのガイドラインがなく、それぞれの主治医の経験によって行われているのが現状です。そのため、使い過ぎて、転倒の原因になってしまったりすることが少なくありません。現在、標準的な用い方を学会などでまとめようとしているところです。

認知症の記憶障害そのものに対する治療薬はいままでありませんでしたが、日本でもアルツハイマー型認知症にみられる記憶障害や判断力の障害を改善したり、悪化を遅くするための薬が少し前から使うことができるようになってきました。
この薬は日本で作られ、すでに世界中で使われていて記憶障害の改善(治療)薬(アリセプト)ですから、今までの精神安定薬とは原理が異なるものです。

アルツハイマー型認知症の方の脳では神経細胞の働きが悪くなったために、記憶に関係するアセチルコリンという神経ホルモンの1種が減っています。この薬はアセチルコリンが分解されるのを防ぎ、アセチルコリンを増やすようにします。

その結果、この薬を飲み続けると1年程度といわれていますが、記憶力や判断力が改善され、また、認知症の進み方も遅くなります。もちろん、この薬はアルツハイマー型認知症を根本的に治す薬ではありませんし、このようなメーカーのいう効能に対して"過剰期待は禁物"という現場の医師の声もあるのも確かです。この薬については、今日世界約60カ国で使用され、現場での実績に注目していきたいものです。