精神療法は心理的側面から精神疾患の治療を計る治療法のことをいいます。
薬物を用いた薬物療法や身体に物理的に働きかける身体療法などに対し、精神療法では治療者が心理的な手段を用いて患者の心身に働きかけることによって、精神疾患の治療を行います。

この精神療法で使用される心理的手段にはさまざまなものがあり、カウンセリングのように治療者が患者と直接会話するもの、芸術のような非言語的手段を用いて患者に自己表現をさせることによって治療を計るもの、自己催眠のように患者の身体や動作に働きかけるもの、患者の心の深い内部を見つめるもの、患者の行動や認知に働きかけるものなどに大きく分類されます。そして、治療者はこれらの手段によって患者の精神疾患の原因を発見し、患者がそれを克服するための援助を与えます。

精神療法の代表的なものとしては、もっとも一般的なカウンセラーによるカウンセリングを始め、自己催眠状態を利用した自律訓練法、患者の動作を改善することによってこころの問題の改善を計る臨床作動法、患者の行動をよりよい方向に改善していく行動療法、患者の誤ったものの見方を改める認知療法。さらに患者の連想からこころの奥底を分析していく精神分析療法、集団単位で受ける集団精神療法、精神症状の原因となる不安を建設的に受け容れる森田療法、自己の内部を観察する内観療法、社会生活でのコミュニケーション技能を訓練する社会生活技能訓練。加えて、遊びを用いた遊戯療法、芸術を用いた芸術療法、心理劇を用いた心理劇療法、患者に箱庭を作らせる箱庭療法、患者の家族を対象とする家族療法、精神症状が発生しない例外的条件を利用する短期療法など、数え切れないほどの種類を挙げることができます。そして、専門の医師によりそれぞれの病気の症状に応じてこれらの治療法の適用が検討されます。


精神療法の方法はそれぞれの治療法によって異なりますが、このうち代表的なカウンセリングの方法としては、カウンセラーと呼ばれる治療者が患者と面談を行うことで、患者の悩みを聞き出して、解決へのヒントを与えます。

自律訓練法の方法としては、患者が自分自身に暗示をかけて、軽い自己催眠状態を導くことで、心身の緊張やストレスを解きほぐします。一方、臨床作動法の方法としては、緊張しそうになった時に身体の力を抜いてやる訓練をすることによって、こころが緊張するのを防いで、ストレスを溜めないことが可能となります。

行動療法の方法としては、刺激に対する患者の誤った行動や反応を削減し、問題行動に変わるべき行動パターンを形成するように努めます。また、認知療法の方法としては、患者の誤ったものの見方を発見し、その修正を行っていきます。一方、精神分析療法の方法としては、患者が治療者の前でこころに次々に浮かぶものごとを自由に話していき、治療者はその話から患者のこころの奥底を分析していきます。また、集団精神療法の方法としては、複数の患者たちが集まってそれぞれの個人的体験や、抱えているこころの問題を話し合うとともに、他の人の体験や悩みにも耳を傾けます。

森田療法の方法としては、患者は安静をとったり、作業を行ったりするなかで、不安を抱きながらもなにかをすることができるということを学ぶことができます。一方、内観療法の方法としては、患者が仕切られた子部屋で一定期間自己の内部観察と分析に集中します。さらに、社会生活技能訓練の方法としては、社会生活におけるコミュニケーションを技能として捉え、患者に対し情報を受信したり送信する技能や、受け取った情報を処理する技能訓練を行います。

遊戯療法の方法としては、治療用の遊戯室でプレイセラピストと呼ばれる治療者が子供を自由に遊ばせ、一方芸術療法の方法としては患者に絵画、音楽、物語、コラージュ、舞踏、陶芸、粘土細工などといった芸術を自由に創作させたり、鑑賞させたりします。さらに箱庭療法では、用意した箱の中に患者に箱庭を自由に造らせていきます。また、心理劇療法では、治療者が監督となって患者たちに脚本のない即興劇を演じさせます。

家族療法の方法としては、患者だけでなく家族との面接も行い、患者のこころの病の原因となっている家族的要因を発見し、誤った家族関係の改善を行うことで、健全な家族関係を構築することを計ります。

最後に短期療法の方法としては、精神症状を引き起こさない「例外」的条件を発見して、それを実行することによって、症状の発症を防止します。
また、各療法の詳しいやり方については、それぞれの項を参照してください。


精神療法の効果はそれぞれの治療法によって違いますが、このうちカウンセリングの効果としては、患者はカウンセラーに本当の思いを素直に話すことで、自分の本当のこころに気づくことができます。そして、自分のこころが抱える問題を客観的に発見して、カウンセラーのヒントからその解決法を発見し、実行する勇気を持つことができます。

自律訓練法の効果としては、催眠状態を患者が自分自身で作り出して、心身ともにリラックスすることで、積もり積もった緊張やストレスを緩和することができ、それらから生じているこころの病気の治療に役立てることが可能となります。また、催眠状態によって低下している身体の免疫力や治癒力を取り戻すことで、こころの病気で生じている身体の病気を治すこともできます。さらに臨床作動法の効果としては、患者の動作を訓練によってよりよい方向に改善することで、こころの働きも改善することができます。一方、行動療法の効果としては、患者の誤った行動習慣を発見し、よりよい行動習慣を学習させることによって、精神症状を軽滅することができます。

認知療法の効果としては、患者の誤ったものの見方を修正することで、さまざまな外界からの刺激に対して患者が悲観的受け止め方をしないようになり、こころの病気を引き起こす原因となっている不安やストレスを減少させることができます。また、精神分析療法の効果としては、患者のこころの奥底を分析してそこに存在するこころの病気の原因となっているトラウマを発見することによって、治療に役立てることができます。

集団精神療法の効果としては、患者は集団の中で語ることを通じて、自分の感じ方や反応の仕方や、対人関係を引き起こしているこころの問題点を発見することができ、一方森田療法では、患者は不安を前向きに受け容れることで、不安を感じてもいたずらにそれを増幅させることもなくなって、神経症などの治療に効果を発揮します。

内観療法の効果としては、患者は他人への感謝の気持ちや自己肯定を学んだり、自分の誤った価値観に気づくことで、よりよい人格へと変わることができます。そして、ストレスに対する認知の仕方も変わって、ストレスの影響を軽減することが可能となります。さらに、社会生活技能訓練の効果としては、情報を受信したり送信したりする技能や、受け取った情報を処理する技能の訓練を行うことで、患者が周囲の人々とのコミュニケーションを円滑に行う一助となり、対人関係に失敗して周囲から孤立したりすることもなくなり、こころの病気の原因となるストレスの影響を受けないですむようになります。

遊戯療法の効果としては、子供は遊びを通じて自分のこころを表現したり、本来の自己を発見することができることで、自分の存在に確信と自信を持つことができ、精神の成長を遂げることが可能となります。加えて芸術療法の効果としては、患者が芸術を自ら造り出したり、鑑賞したりすることによって、言葉では表せない自分のこころの深い部分を表現することができ、失われていた本来のこころを取り戻すことができるともに、ストレスの緩和にも役立ちます。

心理劇療法の効果としては、患者は劇を演じることによって、言葉では表すことができないこころの深い部分を表現することができ、失われていた本来のこころを取り戻すことができるとともに、苦手だった自己表現を学んだり、社会性や協調性を養うことができます。加えて箱庭療法の効果としては、患者は箱庭を造ることによって自分の本当のこころを表現することができます。

家族療法の効果としては、親子関係が引き金となって起こる不登校、行為障害、家庭内暴力などの治療に有効となり、さいごに短期療法の効果としては、精神症状が発生しない例外的条件を実行することによって短期に症状を引き起こさないようにすることができます。
ちなみに各療法の詳しい効果については、それぞれの項を参照してください。