家族療法は患者とともに家族をも対象とする精神療法です。
家族は人間にとってもっとも大切な人間関係で、こころの形成にも大きな影響を与えています。したがって、家族の問題がこころの問題を引き起こす原因となっていることも多く、家族療法ではこころの病気の原因を患者個人だけの問題ではなく、その背後にある家族の問題であると考えます。そして、患者に加えて家族をも治療の対象として家族関係の改善を行うことで、患者のこころの病気の治療を計ります。

また、児童や思春期の患者の引き起こすこころの病気はとくに家族関係の問題がその原因となっていることが多いため、こうしたケースでは家族療法が役立つことがしばしばです。さらに、近頃では夫婦間の問題からこころの病気を引き起こす患者も多くなっていますが、こうした夫婦間の問題も家族療法の対象で、こうした夫婦の問題を扱う家族療法をとくに夫婦療法と呼んでいます。


家族療法では、治療者は患者個人だけでなくその家族関係をも治療の対象として扱い、患者の家族との面接も行います。そして、その中で患者を取り巻く家族の状況を把握し、家族が抱えている問題点を探っていきます。とくに患者と両親や配偶者との関係が重要で、加えて兄弟などの他の家族との関係も把握、分析していきます。こうした面接や話し合いに参加する家族は家族全員が望ましいのですが、母親などの一部の家族のみでもある程度の効果は期待できます。そして、治療者はそこで得た分析を踏まえて、患者のこころの病気の原因となっている家族関係を発見し、誤った家族関係の改善を行うことで、健全な家族関係を構築することを計ります。

うつ病や統合失調症などのこころの病気は治療に長い時間を要するものが多く、患者のみならずその家族にとっても大きなストレスとなっています。そのため、家族がいらいらして患者と軋轢を起こし、その結果患者の症状がますます悪化することも多いため、家族に対する教育が必要となってきます。こうした教育は心理教育的家族療法と呼ばれ、精神疾患に対する知識はもちろん、食事や運動などの日常療法、さらには薬剤療法などといった治療のためのあらゆる知識が家族に伝授されます。


家族療法は患者自身に加えてその家族をも治療の視野に入れることで、とりわけ家族関係が引き金となったこころの病気の治療に有効となります。とくに親子関係に問題を抱える児童や思春期の患者に多い不登校、行為障害、家庭内暴力、反抗挑戦性障害、薬物などの使用による精神や行動の障害などといった精神疾患の治療にこの治療法は有効となっています。

また、家族問題は上記以外のほとんどのこころの病気の発症にも関っており、外傷後ストレス障害や強迫神経症などの神経症、統合失調症、転換性障害、人格障害、摂食障害、心身症などといったさまざまな症例の治療にも家族療法が有効となります。

前述した心理教育的家族療法は、うつ病、統合失調症、自閉症、多動性障害などといった長期を要する慢性の精神疾患の患者の家族に病気の実態やケア法を教育することによって、患者の治療に効果を発揮するのに加えて家族にかかるストレスをも軽減することができます。