社会生活技能訓練は患者の社会生活でのコミュニケーション技能を訓練する精神療法です。
こころに病気を持つ人は周囲の人々に自分の気持ちや思ったことをうまく表現することが苦手なことが多くなっています。その結果、周囲から孤立して、うまく社会生活を送ることができずにストレスを感じてこころの病気を引き起こしたり、症状を悪化させたりしてしまいます。

社会生活技能訓練では、こうした社会生活でのコミュニケーションを技能として捉え、情報を受信したり送信する技能や、受け取った情報を処理する技能の訓練を行います。そして、精神障害を持つ人が社会生活において周囲の人々とコミュニケーションする技能を改善することによって、社会生活に適合する手助けを行います。

社会生活技能訓練における情報の受信技能では、コミュニケーションが行われている状況やコミュニケーションの相手が発する言葉を正しく理解する技能の訓練を、一方情報の送信技能ではどのような状況で、どのような言葉で、いかに情報をコミュニケーションの相手に伝えるかの訓練を行います。また、受け取った情報を処理する技能では、受け取った情報をどのように認知し、対応策を考えるかの訓練を行います。

この社会生活技能訓練という訓練は社会的スキル訓練やSST(Social Skills Training)とも呼ばれ、もともとは対人関係が苦手な人に周囲の人々とのコミュニケーション技能を訓練するために1970年代にアメリカで開発されたものですが、現在では精神に障害を持つ人たちの社会生活への復帰を手助けするためにも使われるようになっています。


社会生活技能訓練の方法としては、コミュニケーションを技能として捉え、情報を受信したり送信する技能や、受け取った情報を処理する技能の訓練を行います。

実際の訓練では、まず患者の訓練に対する意欲が大切なため、訓練への動機付けを行うことから始め、その後患者が不足しているコミュニケーション技能を発見して、改善した目標を設定します。そして、まずは相手に情報を伝える訓練では、伝えたい情報を言語あるいは非言語的手段によって相手に伝える訓練を行います。ここで使われる情報の非言語的伝達手段としては、表情、身振り、視線、話し方、声の大きさや抑揚、調子などがあり、ときには言語以上に相手に情報を伝えることができるため、とくに感情の表現に有効となります。また、相手に情報を伝える状況も重要で、相手が忙しそうにしていたり、他のことに興味を抱いているような状況では相手に情報を伝えることは難しくなるということを覚えます。

相手の伝えたい情報をいかに受信するかの技能では、相手の言葉に加えて、上記のような相手の発する非言語的手段から相手の感情や強調したい情報を正確に読み取る技能を学びます。さらに受け取った情報の処理技能では、受け取った情報をどのように認知し、対応策を考えるかの訓練を行います。

また、訓練では、治療者がリーダーになってなん人かの相手役を決めて、演劇形式で訓練を行うのが効果的です。患者は相手役になった患者に話しかけてもらい、その内容を理解して、どのように対応するかを演じることで、コミュニケーションの技能を学ぶことができます。


社会生活技能訓練の効果としては、情報を受信したり送信したりする技能や、受け取った情報を処理する技能の訓練を行うことで、精神疾患を持つ人が周囲の人々とのコミュニケーションを円滑に行う一助となります。そして、精神疾患を持つ人でも対人関係に失敗して周囲から孤立したりすることがなくなり、円満な社会生活を送れることで、精神疾患の原因となっている社会生活におけるストレスを受けないですむようになります。

最近ではこうした効果から、日本でも多くの施設で社会生活技能訓練が行われるようになっており、とくに症状が改善して社会復帰を目指そうとする患者や、進学などの新しい社会生活を始めようとする患者の治療に有効な一助となっています。