森田療法は神経症の原因となる不安という感情を建設的に受け容れることによって、神経症の治療を計ろうとする精神療法です。

神経症というこころの病は不安や緊張がそのおもな発症原因となっていますが、こうした不安や緊張を患者が感じまいとすると、かえって不安や緊張がつのってしまう結果となってしまいます。たとえば神経症が引き起こす身体症状である頭痛や動悸にしても、患者がそれを感じまいと意識すると、そのプレッシャーからますます症状が増幅されてしまうのです。

たしかに恐ろしい出来事や困難を前に不安や緊張を感じるのは誰にでもある当たり前のことなのですが、問題なのは不安や緊張を感じまいとするその態度自体です。こうした態度こそが不安や緊張を増幅させて、神経症を引き起こしているのだというのが、森田療法の考え方なのです。

1917年自ら神経症に悩んでいた日本人の森田正馬氏によって考案されたこの森田療法では、こうした考え方から不安や緊張を病気の原因とはとらえずに、むしろよい結果を残したいとか、周りによく見られたいとかいった前向きの気持ちの結果として建設的に受け容れることによって、不安や緊張の増幅を抑え、神経症の発症を予防することを目指しています。


森田療法の治療法としては、症状が軽くて日常生活にさほどの問題がない場合には外来治療も可能となりますが、症状があまりに重い場合には入院治療が必要となります。この場合の入院治療では、まずは1週間程度の安静をとり、患者はテレビや雑誌も禁止されてベッドで横になったまま終日過ごすことを命じられます。こうしてなにごともせずに過ごすことで、患者のこころには不安とともに次第になにかをしたいという気持ちが湧き上がってくるのです。さらに次の1週間はなにかをしたいという気持ちがますます湧き上がってくる中で、患者は日記をつけることが許されるようになります。そして、1日の行動や思ったことを日記につづり、それを治療者とともに振り返る中で、自分の思考や行動のパターンを分析していきます。

次の1ヶ月は作業期間です。患者は指定された作業を許される中で、不安を抱えながらも作業をすることによって充実感を得ることができ、不安も次第に和らいでいくことを学習します。また、この段階では作業における自分の行動や対人関係における態度が引き起こすさまざまな問題を患者が経験することにより、自分の行動や態度を認識、改善することができます。そして、最後の1月は、患者に外出や外泊が許される社会復帰に向けた最終段階です。

このような森田療法の治療の結果、患者は不安を抱きながらもなにかをすることで不安が次第に和らいでいくことを学ぶことができ、不安をいたずらに増幅させて神経症に陥るというそれまでの悪循環を防ぐことができるようになるのです。

一方、外来での森田療法では、患者は日常生活を送る中で日記をつけ、それを治療者が読む中で患者の思考や行動のパターンを分析していきますが、この場合患者は日記をつけること自体で自分の思考や行動パターン、態度などを客観的に分析することができます。


森田療法では、患者は不安や緊張といった感情をこころの病気の原因とはとらえずに、むしろよい結果を残したいとか、周りによく見られたいとかいった建設的欲求の結果として受け容れることを学びます。そして、上記のような治療によって、不安や緊張を抱えながらもなにかをすることによって充実感を得ることができ、不安や緊張も次第に和らいでいくことを覚えることができます。その結果、たとえ不安や緊張を感じたところで、それをいたずらに増幅させることもなく、不安や緊張の増幅から神経症を引き起こすというそれまでの悪循環を防ぐことができるようになります。
また、森田療法では、患者が自分の思考や行動パターン、態度などを自覚することで、それらを改善して、人格の改善に役立てることもできます。

こうした森田療法は心気症や恐怖症を始めとするさまざまな神経症の治療に有効となっていますが、同じ神経症の中でもヒステリー系のものには森田療法が適用にならないのでその点は注意が必要です。