内観療法は患者が自己の内部を観察することによってこころの病気を治療する精神療法です。
内観療法では、患者は過去の対人関係における自らの態度や行動を観察、分析することによって真実の自己を発見することができます。そして、それまでの自己や他者に対する誤った認知が改善されることで、誤った価値観の転換が起こります。その結果、それまで問題を起こしていた患者の態度や行動が改善されて、こころの病気が治療されることになります。

この内観療法という治療法は「身調べ」という古来から伝えられてきた修業法に日本の吉本伊信氏が改良を加えたもので、治療法がシンプルなため、治療者が指導法を短期で学ぶことができるという利点も持っています。加えて、患者の側もこれを簡単に覚えることができ、またわずか1週間ほどで効果が現れるという特徴を持っているため、とくに短期療法としての評価を得ています。


内観療法には一定期間集中して実行される集中内観療法と日常生活の中で行われる日常内観療法とがあり、集中型のものは約1週間を基準とします。この集中内観療法では、まず患者に都合のよい時期を選んでもらい、約1週間治療だけに専念できる期間を作ります。

そして、患者にあらかじめ内観療法についてよく説明することで、治療への疑問や不安を解くとともに治療に対する動機づけを行って、1週間の間自己の内部観察に集中する決意を固めさせます。
さて、こうして準備を整えた後にいよいよ内観療法の実践に入るわけですが、治療にあたっては患者は仕切られた子部屋で終日自己の内部観察と分析に集中します。まず最初の段階では、自己内部の模索を行い、次には葛藤を、その後大きな転換期を経て、最後は悟りへというように、観察、分析は進んで行きます。

その間治療者の方は1時間くらいごとに患者に面談を行い、患者の母親に始まる子供の頃からの人間関係をテーマごとに振り返らせます。ここでのテーマというのは、まず第一に「人にしてもらったこと」です。患者は今まで他の人間からしてもらったことを思い出すことで、自分にそそがれた愛情を再認識し、他人への感謝の気持ちや自己肯定を学ぶことができるのです。また、第二のテーマは「してあげたこと」で、もし過去を振り返ってあまりに人にしてあげたことが少ない患者は、自分の勝手さに気づいて反省の気持ちが生まれます。さらに第三のテーマは「迷惑をかけたこと」です。ここでも患者は今まで他人にかけた多くの迷惑を振り返ることで、反省の気持ちが生まれます。

こうして患者は過去の人間関係を振り返ることで、過去の自分の誤った価値観に気づいて、新しい価値観を造り出すことができます。そして、ものごとに対する認知の仕方が変わって、誤った認知が引き起こしていたこころの問題を克服することができます。
一方、日常の中で行われる日常内観療法では、上記のような自己の内部観察と分析を患者が日常生活の中で短時間ずつですが継続的に行うことで、上記と同様の成果を得ることができます。


内観療法の効果としては、上記のような観察によって、患者は他人への感謝の気持ちや自己肯定を学んだり、自分の身勝手さや他人にかけた多くの迷惑に気づいてこころに反省の気持ちが生まれます。その結果、自分の誤った価値観に気づいて、患者の中に新しい価値観が生まれ、ストレスに対する認知の仕方も変わって、ストレスの影響を軽減することができます。そして、ストレスを原因として発症する心身症、解離性障害、外傷後ストレス障害、人格障害などといったさまざまなこころの病気の治療に効果を挙げることが可能となります。

また、ストレスに対する認知の仕方が変わることで、ストレスに対する患者の反応行動も改善することができ、行動障害、家庭内暴力、登校拒否、反抗挑戦性障害、摂食障害、アルコール依存、賭博などの各種病的行為、薬物などの使用による精神や行動の障害などのこころの病気を治療することができます。