心理劇療法は心理劇を用いてこころの病気を治療する精神療法です。
サイコドラマとも呼ばれる心理劇療法は別の項でも述べる芸術療法の一種で、患者に劇を演じさせることによって本来のこころを表現させ、一方治療者は言葉では表現されない患者の真のこころを知ることにより、的確な治療を行うことができます。

心理劇療法という治療法では、こころに問題を持っている患者に脚本のない即興形式の劇を演じさせることが治療の中心となります。患者は自由に劇を演じることによって、言葉のみならず身振りや手振りを用いて言葉だけでは表せないこころの深い部分を表現することができ、押し付けられていたり、傷ついたりしていたこころが解放されて、本来のこころを取り戻すことができるようになるのです。

とくに神経症や統合失調症などといったこころの病気の患者の中には、言葉でコミュニケーションをとるのが苦手な患者が多く、こうしたケースでは心理劇療法が有効な治療手段となります。また、不登校や家庭内暴力を起こしている児童などにも心理劇療法は有効な治療手段となっています。


心理劇療法の方法としては、治療者が監督となって、患者たちに脚本のない即興劇を演じさせます。
劇の時間は1時間程度、週に1回くらいの割で行われ、劇の開催にあたっては、患者が人見知りすることが多いので、演ずる前に互いに話し合ったりして互いの理解を深め合った後で、テーマやそれぞれの役柄を決定します。患者の演じる役割としては主役と脇役とがあり、選ばれたテーマを提供した人が主役に選ばれることが多くなっています。しかし、役柄の設定にあたっては各自の意志を重んじて、かならず希望者の中から選び、けっして無理にあてがってはならないのを忘れてはなりません。

実際の演技にあたっては、治療者である監督が主役の患者と相談しながら劇を作っていきます。主役の患者は自分の役を演じながら自分のこころの問題を表現していき、脇役の患者は主役に協力しながらともに劇を造っていきます。そして、無事に劇が終わった後は、シェアリングと呼ばれる会話が行われ、脇役たちが主役の演技に対して自分の意見や体験を語ることで、互いに課題を共有し合います。


心理劇療法では、患者は劇を演じることによって、言葉では言い表すことができない自分のこころの深い部分を表現することができます。その結果、抑圧されていたり、傷ついたりしていたこころが解放され、失われていた本来のこころを取り戻すことができるようになるのです。とくに主役を演じる患者は、皆に注目される中で自分を思う存分表現することによって、苦手だった自己表現を学ぶことができるようになり、それまでのようにストレスを溜めることもなくなります。

一方、脇役を演じる患者は、主役の演技に協力することによって、それまで欠けていた社会性や協調性を養うことができるとともに、ほかの患者とともに劇を演じることによって、他の人たちとの一体感を持つことができ、孤独感の解消にも繋がります。

こうした心理劇療法は、とくにひとりでこころの問題を悩んでいることの多い神経症や統合失調症などの患者の治療に有効となっています。