箱庭療法は患者に箱庭を作らせることによってこころの病気の治療を行う精神療法です。
箱の中の小さな世界である箱庭は、それを造る者のこころを反映させた象徴的世界です。箱庭という枠に守られることによって、患者は安心して隠していた自らの世界を造り出すことができ、押さえつけられていたこころが解き放たれて、本来持っているこころを取り戻すことができるという考えから考案されたのがこの箱庭療法です。

また、箱庭は人間のこころが治癒していく過程を表す象徴的世界でもあり、箱庭療法によって治療者は患者の造った箱庭を分析することで患者のこころの変化を推測することができます。
こうした箱庭療法は別の項で述べる芸術療法の一種で、スイスのカルフ博士によって考案され、現在では世界中でこころの病気の治療に使われるようになっています。


箱庭療法の具体的なやり方としては、治療者は患者に用意した箱と材料を与え、箱庭を自由に造らせます。用意される箱の代表的なものは、幅50センチ、長さ70センチ、高さ10センチほどの長方形の箱で、中には砂がしかれています。用意される材料としては、家、人、植物、動物、乗り物、家具、岩、橋などの、さまざまなミニチュアがあり、患者はこれらのミニチュアを箱庭の中に自由に置くことによって自分の好みの風景を作り出すことができるようになっています。

一方、患者が箱庭を作っている間はセラピストは介入や批評などをせずに静かに見守っています。箱庭を造る時間は通常1時間くらいですが、患者が箱庭を作るうちにミニチュアを箱の外にまで置き始めたり、取り乱したりし始めた場合には、無理に箱庭作りを続けさせずにすぐに止めさせた方が懸命でしょう。

箱庭が出来上がった後は、治療者は箱庭の写真を撮影した後、患者と気楽に話しながら造られた箱庭を分析して、患者のこころを理解するように努めます。
ちなみにこうした箱庭造りは、1回だけのものから何回も造るものまでさまざまですが、やめる時期は患者に任せた方が賢明です。なぜなら患者が自らやめたいと思う時には、患者のこころに圧し掛かっていたストレスが解消されている場合が多いからです。


箱庭療法では、患者は箱庭を造ることによって隠されていた本当のこころを表現することができます。とくに子供は言葉が未発達で言葉を用いて自分の思いをうまく表現することができないために、ストレスや不安などをこころの中に溜め込んでいます。しかし、箱庭療法では、箱庭を造ることによって本当のこころを表現することができ、本来の自己を発見して、自己に確信を持ち、精神の成長を遂げることが可能となります。また、子供はカウンセリングなどを行っても自分のこころをうまく表現することができないためにカウンセラーの診断が難しくなっていますが、こうした箱庭造りを通じればカウンセラーが子供の真のこころの状態を理解することが可能となります。

また、成人にとっても、子供時代に帰ったような箱庭造りはそれ自体が癒しの効果があるということも言えるでしょう。
最後にこうした箱庭療法の適用年齢としては、幼児から老人まで男女を問わずあらゆる年齢に効果的です。また、適用症例的には、神経症を始め、心身症、緘黙症、統合失調症などといったこころの病気の治療に効果を挙げています