自律訓練法は催眠状態を利用した精神療法です。
自律訓練法は精神療法の一種で、1930年代にドイツ人精神医学者J・H・シュルツ博士によって考案され、現在ではもっとも効果的な精神治療法のひとつとなって、世界中で使われています。
人間は催眠状態に陥ると、身体の働きを司る自律神経、とくに副交感神経が強く働いてストレスで緊張している心身をリラックスさせて、ストレスや緊張が解きほぐされます。こうした催眠状態を患者が自分自身に暗示をかけて作り出すことによって、こころの病気を引き起こす原因となっている心身の緊張やストレスを緩和し、低下している身体の免疫力や治癒力を取り戻させようというのが自律訓練法です。

この自律訓練法という治療法は最初は医師による指導が必要ですが、慣れるにしたがって自分でもできるようになるので、患者はいつでも自分でストレスをコントロールすることができるようになります。
ちなみに自律訓練法を日本人向けに改良した自己統制法という治療法も一部で使われています。


自律訓練法の方法としては、患者が自分に暗示をかけて、軽い自己催眠状態を導くことで、心身の緊張やストレスを解きほぐします。人間は催眠状態になると筋肉がゆるんで、手足を重く感じたり、暖かく感じたりしますが、自律訓練法ではこうした感覚を感じるように自分から導いていきます。具体的訓練としては、手足を重く感じる重感練習と、手足を暖かく感じる温感練習とが中心となり、手順を踏みながら次第に自分を催眠状態へと導いていきます。

具体的な手順としては以下のようなものがあり、各手順の中で「公式言語」と呼ばれる言葉をこころの中で繰り返しながら、自己暗示をかけていきます。
まず仰向けになるか、腰掛けるかします。そして、目を閉じてゆっくりと呼吸しながら普通の呼吸に戻して、「気持ちが落ち着いている」とこころの中で繰り返した後、本当に気持ちが落ち着いてくるのを待ちます。

次に右腕を意識して「右手が重たい」とこころの中で繰り返しながら、右腕が重くなるのを待ちます。そして、右手が重くなったら、今度は意識を両手に向けて「両手が重たい」と唱え、次に意識を両足に向けて「両足が重たい」とこころの中で繰り返しながら、両手両足が重くなるのを待ちます。
そして、両手両足が重くなったら、また右手を意識しながら「右手が暖かい」とこころの中で呟き、さらに意識を両手両足へと向けていき、「両手が暖かい」、「両足が暖かい」、「両手両足が温かい」とこころの中で繰り返しながら、両手両足が温かくなるのを待ちます。ここで大切なのは、無理に手足を重く感じたり、暖かく感じようとするのではなく、あくまで自然にそう感じられるのを待つという態度です。

こうして両手両足が温かくなったら、「心臓が規則正しく鼓動している」、「楽に呼吸している」、「お腹が温かい」と順を追ってこころの中で繰り返していきます。そして、最後に「額が涼しい」とこころの中で繰り返して、さわやかな気分を味わったところで一連の訓練は終りとなります。
一方、訓練を終わるにあたっては催眠状態を元に戻すための消去動作を行う必要があり、手を握ったり、開いたり、ひじを伸ばしたり、背伸びをしたりといった動作を意識が元に戻るまで繰り返します。
こうした自律訓練法は最初は医師の指導の元に行われますが、慣れるに従って、自分でも行うことができようになり、1日に2~3回、1回5分程度繰り返すことで、治療効果が期待できます。


自律訓練法では上記のような手順に従って催眠状態を患者自身が作り出すことにより、心身ともにリラックスすることができます。そして積もり積もった緊張やストレスを緩和することで、それらが原因となって生じているこころの病の治療に役立つとともに、低下している身体の免疫力や治癒力を取り戻してこころの病気から来る身体症状を治すことも可能となります。

また、自律訓練法は慣れれば自分でも簡単に行うことができ、いつでも自力でストレスをコントロールすることができるので、精神障害の治療に効果を発揮します。この治療法は急性の精神障害や一部の心因性の病気には適応できないので、前もってどのようなケースで行えばよいかを医師と相談しておく必要があるでしょう。