メンタルジムホーム
●職場復帰の希望に対して上司の接し方
うつ病の人はもともと責任感が強く、「職場に迷惑をかけている」などと考え、まだ十分に回復していないのに、あせりから、早すぎる職場復帰を望むことがあります。このようなときは、上司から「会社のことは心配しないで、十分に休養するように」と声をかけてもらうと、ずいぶんと楽になるものです。
中途半端な職場復帰は、再発のもとになりかねません。
とりわけ上司は、「医者が良いというまで通院したほうがよい」と指導するとよいのです。
もし、その部下の患者さんが「もう症状が取れたし、受診で休むのは皆に迷惑をかけるから」という反応をしたら、「しっかり受診して、健康管理をするのが、あなたの仕事です」などというのが良いでしょう。

そして、うつ病は、良い状態と悪い状態を交互に繰り返しながら回復していきますから、患者の多くは、自分が最も良くなった状態の時に、「これなら職場に復帰できる」と判断してしまいがちです。最も調子が悪いときにも職場に戻って問題が発生しないかどうかという観点からも判断し、上司は主治医と相談の上、復帰のスケジュールを決めるようにしましょう。

●職場の人たちの接し方
職場の人たちは、病気には配慮しつつ、患者を特別視することなく休職前と同じように接することが大切です。
「調子はどう?」と、つい聞きたくなってしまいますが、本人はそっとしておいてほしいと思っています。また、通院治療や服薬継続が、気兼ねなくできるような雰囲気が職場には必要です。
簡単にいえば、ケガや体の病気になって職場復帰したときと同じように接すればよいのです。

1)職場では普通に接する。腫れ物に触るように気を使われたら、誰でも嫌になります。
2)大事なことは、うつ病の場合、励ましは禁物です! その他、“してはいけないこと”を参照してください。
3)職場で薬を飲み続けられる自然な環境はもちろん、いつでも受診できる体制にあることが必要です。
4)復帰後もしばらくは仕事上で大事な決定をさせないようにする。大事な決定は精神的な負担が大きくなるので先延ばしにしたほうがよいのです。

●段階的復帰の必要性
スポーツを例に例えると判りやすいのですが、うつ病の場合、ポイントは「段階的復帰」です。
うつ病は、治療によって症状が軽快することと働く能力が元に戻ることにはズレがあります。このズレを埋めるのが段階的復帰なのです。
スポーツをする場合、急に走り出さず、ウォーミングアップが必要です。このウォーミングアップにあたるのが「段階的復帰」なのだと理解してください。
下記に「段階的復帰の具体例」を紹介しますので、上司の方は実現できるようにしたいものです。

●段階的復帰の具体例:出社準備
職場に復帰しようとした時、多くの場合、すぐに仕事に戻ろうとします。しかし、すぐに出社するのではなく、復帰のための準備から始めます。たとえば、
「スーツを着てネクタイをして、満員電車に揺られて図書館にでも行ってみる」、図書館で気の向くまま本を読んで帰宅。
あるいは、「会社の近くの喫茶店で新聞を読みながらコーヒーをゆっくり飲む」、そのまま会社には行かず帰宅。
こんなことから始め、このような“通勤”が一週間くらい続けられれば、自信もついてきます。
他にも本人と相談して、ひとつずつ、少しずつ、元気だった頃に実感しながら戻れるようなことができるように導いてください。

●段階的復帰の具体例:勤務準備
たとえば、試し出勤というスタイルではなく、「最初の二週間は半日勤務」、「次の二週間は一日勤務で残業はなし」、などのように段階的に仕事になじませるという方法です。
さらに職場復帰の直後、ストレスが少なく、過度の責任がかからない業務についてもらうなどの配慮が必要となります。

心の病を克服して職場に復帰しようとしている人の願いよりも、常に職場の利益が優先される判断がなされていくと、その職場で働く人々のメンタルヘルスへの偏見が作られていきます。しかも、「心の病気になって休職した場合、職場復帰は困難だ」という見方が定着するようになると、心の不調をきたしても、誰も健康管理室や医者に行かなくなる恐れがあります。
つまり上司や管理者が目先の会社の利益を優先して職場復帰に対処した場合、職場のメンタルヘルスをますます悪化させ、全体として企業の生産性を著しく低下させることになります。